音楽・人・地域と繋がり、富士から発信する。 Ippei Tamura INTERVIEW

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 今年で開催4年目、そして1000人規模へと成長した、静岡の野外フェス〈FreeShelter〉の共同代表、田村いっぺい(Ippei Tamura)。現在、彼は音楽フェスのみならず、地元にある富士山世界遺産ガイドの資格の取得や、地方商店街の中でクロスオーバーな活動をする共同体 ”ENPITU.CO”を仲間とともに立上げ、NPO主催のトークイベントなどにも講師として出演をこなし活動の場を広げている。
  今回、〈FreeShelter〉の立上げ人である共同オーガナイザーのToshiya Fukasawa氏と野外フェスをはじめるに至った経緯や、イベントを通じて表現する2人の地元への想い、今後の展望。そして”ENPITU.CO”が主宰するイベント〈商店街占拠〉、田村いっぺい個人としての今後の活動について話をきいた。

 

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音楽を通じて静岡の魅力を伝えたい、そして地域を盛り上げたい。
2人で作る〈FreeShelter〉、それぞれの地元への愛着。

 

―まず、なぜ〈FreeShelter〉をはじめようとおもったのでしょうか。

 実は1回目の開催の頃はあまり興味はなかったんです。もともと僕はお店をやっていたので、自分で企画をたてて、ひとりでイベントをやっていましたが、そんな時にクラブシーンでずっと遊んでいた相方のモリモリ(FreeShelterオーガナイザー・Toshiya Fukasawa氏)が「俺はクラブで遊んでいるやつを外に出したい!」っていう話を、店にきていきなり語りだして。だけどモリモリはテントもたてられない。といいますかアウトドアのことはわからない。キャンプなんて全くできないのを知っていたんです。だからこそだと思うけど、僕は野外フェスが好きだったし、昔からキャンプばかり行っていたので、「フェスにしたいんだ、手伝ってくれ!」と相談されたのがきっかけですね。

―同じ年、同じ静岡ですけど、学校で同級生だったり?

 同じ静岡だけど学校が一緒だったとかではないです。ジャンルは違うけど、同じ年で音楽を通じたつながりがあって、以前から知っていました。なんだか変わった奴だな。って。笑 僕はバンドもアウトドアも好きだし、もちろん小さなイベントも自分でやっていたし、モリモリは昔からDJやっていたし、音楽がとにかく好きなのは知っていたので、それじゃあ一緒にイベントやろうよという流れで…。なんか勢いがありましたから。彼の。

―よしはじめるぞ!そう決めてから形にするのはとても大変なだと感じますが、企画の立上げや苦労したことはなんでしょう。

 1回目はモリモリのことを、本当にやるのかな。そうおもって少し遠くから見ているような感覚でした。当時は自分のお店があったので。お店のイベントをこなしながら、本当にやるなら手伝えることは協力するよ。そんな感じでイベントを俯瞰視していました。なので、骨組みづくりはモリモリなんです。1回目は完全にローカルパーティーで規模感も100人くらい。地元のバンドとDJだけを、とりあえず外に持っていった、デカいバーベキューパーティみたいな感じになってました。それをちゃんとした本格的なイベントにしたい。そういわれたので、2年目から本格的に手伝いはじめましたね。なので根本的に〈FreeShelter〉を立上げたのはモリモリなんです。

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―毎年夏に静岡で開催される野外フェスとして認知されてきましたが、続けることが決まった知られざるエピソードですね。

 「どうしても、もっと規模を大きくしたいんだ!!」って、とにかくモリモリの勢いがすごかったんです。笑
地元の話になりますが、僕の住んでいる富士は、静岡の街から車で1時間近くかかるし、近い場所ではない。富士のエリアはクラブで遊ぶ人、DJやバンドをやっている人がそれほど多くはないし、さらにそれらのカルチャーは一緒になることが少ないと感じていました。クラブで遊ぶ人はクラブに行ってDJのイベントに行く。バンドやフェス好きはライブハウスやフェスにしか行かない。そうゆうふうに分離されている気がしました。そんな中で僕とモリモリが出会ったのは大きな出会いでしたね。彼と僕はお互いが遊んでいるところのいいところを知っていて、それぞれにいい音楽もあればいいやつもいる。それを知っているなら融合させないと、このエリアは勿体ない。バンドもDJも混ぜて、野外に持って行こう!それがそのまま〈FreeShelter〉を続けていく上でのコンセプトになりました。
僕もそのころからまちづくりとか、地元の同世代、若い人をどうにかしたい。そう考えていたので、好きな音楽を取りいれて、いろいろな人が融合できる空間ができたらいいなと考えていました。モリモリもこのままじゃ自分自身もこのエリアのクラブシーンも終わっちゃう。自分たちでなんとかしたいんだよって言っていて。とにかくモリモリの熱意を感じました。

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―モリモリ君は静岡のクラブシーンを盛り上げたくて、いっぺい君は地元地域を活性化させたいという気持ちがあってこそ。

 地域活性化っていうと大げさだしあんまり好きな言葉ではないかもしれない。イベントごとをやれば活性化するという単純なことではないともおもいますし。だけどまちが盛りあがる可能性のひとつに音楽もありえるとおもっていました。これからもそれをもっと続けていきたい。なので〈FreeShelter〉は来年が5周年になりますが、まだ地元のアーティストを多くラインナップにいれる予定ですし、そこは絶対に避けたくない。ローカルのミュージシャンは絶対にラインナップにいれつづけます。

―2人の要素が合わさる。それを平行すること自体がコンセプトなんですね。

 そうですね。2人でやっている意味は本当に大きいです。モリモリは野外の知識がまったくなかったし、テントも建てられない。というか寝袋も持ってなかったし。今でも、ペグひとつ打てないから、正直、ちょっとイラッとする時もある。笑。 それでも彼が野外フェスをやりたい、続けたいというのは、それなりの熱意がないとできないんじゃないでしょうか。その勢いに負けているんですよ、僕が。笑

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―いっぺい君には地元への熱意を感じますよね。富士山のガイドの資格を取得をしたり。

 静岡県で認定している”富士山世界遺産ガイド”ですね。アウトドアにも興味はありますが、単純に地元なので富士山を愛しています。笑 昔から全国を旅するのも好きだったし、ここ数年で海外の旅にでることも多くなりました。どこに行っても出会う人たちに静岡から来た、日本から来たというと、やっぱり「富士山」って言ってくれるんです。それはとても嬉しいことですし、家から富士山が見える場所で育ってきましたが、そうゆう風に言われてみると、あらためて僕は富士山が好きなんだなって感じました。
意外と知らない人が多いですが、富士山の世界遺産って山だけが世界遺産になっているわけではないんですよ。文化遺産なので京都の寺社群などと同じように、富士山を含め25カ、所世界遺産に認定されている神社などがあって、この土地の歴史や文化、昔の人が富士山をどうゆう対象と捉えて育ってきたのか。全部のことが含まれて世界遺産になっているんです。だから単純に富士山の案内をするというより、富士山ってすごいパワーを持っているんだよって。そうゆうのを知ること、伝えることが面白くて。
それに富士山は”信仰の対象と芸術の源泉”というフレーズでユネスコの世界遺産に登録されているんです。なので富士山と芸術は切っても切れないんですよ。〈FreeShelter〉に出演するミュージシャンも、ハートランド朝霧(※1)でやるのは演奏する時に、目の前に富士山がバシッと見えるから、あのステージで演奏したいって言ってくれる人もいて、プレイヤーも富士山を目の前にして演奏するのはなにか感じるものがあるんじゃないのかなって。

―〈FreeShelter〉の魅力は2人の要素に加えて、ハートランド朝霧から見える富士山があるといことが大きいですね。

 とても大きな要素ですね。あの土地じゃないとできないかな。これからも場所は変えたくないですね。なので、実はこれ以上規模も大きくしたくないという気持ちが強くあります。ハートランド朝霧では、広さとして一般のお客さんがはいるには1000人が限度だとおもいますし、これ以上大きくするとハートランド朝霧には収まらないじゃないですか。富士山の見えるあの場所でずっとやっていきたいな。

 

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―これまでの〈FreeShelter〉の4年間を踏まえて、今後の展望はありますか。

 もちろんあります。極端なことをいうとコンセプトに地元のことがあるので、例えばですが、この先ずっと続けていったときに、全国の人が知らないローカルのアーティストしか出演していないのにチケットが完売するくらい、イベントも地元のバンド・DJシーンも強くなっていく。そこまで行きついたら凄いなっておもいますね。ラインナップを見てからお客さんが遊びにくることを決めるというより、この空間が好きだから、毎年の恒例行事として〈FreeShelter〉に行く!みたいな感じになったら嬉しいですね。
最終的にそこまでいったら絶対にこの街、ローカルの音楽シーンが変わってくるとおもうし、なにかしらのムーブメントが起きているレベルになっているとおもうんです。今は尊敬するアーティスト、好きなアーティスト。ゲストでいろいろなアーティストに出演してもらっていますが、あの人が出演するから行く。多分、そうゆうお客さんだけだとイベントとしても、地域のことを考えたコンセプトとしても続いていかないじゃないですか。だからしっかりとふたりで考えて、〈FreeShelter〉らしさをしっかりと作っていくということを目指しています。もちろん多くのイベントがそうだとおもいますが。

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人と人が出会い、つながり、直接コミュニケーションをとる。一緒にアクションを起こして、地元エリアの活性化を。
自分たちの住む街のことを考える人たちと一緒にアクションを起こす。そして、全国でおなじ問題をかかえる場所へとつなげていきたい。

 

―〈FreeShelter〉とはまた違った形で、地元である富士エリアの商店街を盛りあげる団体を立ちあげたり、トークイイベントにも出演していますね。その活動はどうゆう経緯ではじめたのでしょうか。

 〈FreeShelter〉とは違って、音楽と関係のないところで、地元のまちをおもしろくしたいなっておもっていたときに、フリーで建築の仕事してた友人と、自営で工作所をやって、あらゆるものづくりをしていた職人さんと出会いました。それぞれ手に職を持っていた尊敬できる人で、自分のスキルを活かして自分の住むまちをなんとかできないかなどと、彼らも僕と同じようなことを考えていたんですよ。そして3人で共同体を組みました。いまのところ会社にはしていません。ゆるい共同体と僕らは呼んでいて”ENPITU.CO”という名前で活動しています。個人の能力を適宜うまく使えるネットワークみたいな感じですかね。

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―その活動を通じたイベントが

 〈商店街占拠〉という名前です。”ENPITU.CO”のメンバーで最初に〈商店街占拠〉をやろうとおもったのは、じっくり自分の周りをみてみると、おもしろい地域だし、おもしろい人達もいるのに、スプロール化(※2)という現象もあったりして、商店街なのにそこから人が抜けて、建物だけが余ってる、シャッターしまってるテナントも含めて、まぁとにかく空き家が多いんです。だけどちゃんと街中を探してみると、こんなに恰好良い建物が残っているのに誰も使ってないのはもったいない。そういう建物ばかりが目立って見えたんです。それを僕たちが、積極的に見つけて、使って。この空間を、こんな風に使ったら面白いんじゃないのかな。そう考えていて、それを発信して、同じように思ってくれる人たちとか、一緒にやりたい仲間を探して、ここでこうゆうことをやろう。やっちゃおうよ!って。
そのきっかけになる活動のひとつとしてイベントをしよう。そうゆう話になり〈商店街占拠〉をしました。”占拠”は”ジャック”する。という意味で、おじいちゃん、おばあちゃんが聞いたら占拠って過激なイメージでとらえるかもしれませんが、勢いのある単語としてわざと、占拠というフレーズを使っています。能動的に活用したい!というか。今言ったみたいに、こんなもったいないとこあるなら僕たちが使っちゃうよ?という意思表示を込めているんです。
地元、富士の吉原商店街に6階建ての立体駐車場があるんですけど、休みの日は全然車が停まってないんですよ。その立体駐車場から富士山がバシッと見えるんですけど、まずそれが勿体ないというふうにおもっていて、ここに車じゃないものを持ってこよう。その立体駐車場に全国からさまざまなアーティストを呼んで、映画館を作ったり、お店を作ったり。もちろんライブのステージも組んで。

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―それは”ENPITU.CO”のメンバーが地元の商店街の人たちに掛けあって、営業もしたりしているのでしょうか。

 いや、少し厳しい言いまわしになってしまいますが、地元の商店街の人達は商店街のことをどうでもいいというか、本腰をいれて考えていないひとも多くて…。

―商店街に人が集まらなくても、このままでいいというようなスタンス?

 物件を持てあましているのに、この先に年金も入ってくるし、人は商店街から離れていって、これからあたらしく住む人もいない。なので店舗などの物件は荷物置き場にしてしまった。若い子たちが商店街でお店をはじめて、なにか面倒ごとがおきたりするのはいやだ。そうゆう声って結構おおかったんです。もちろんそうじゃない人もいますけど。笑 ただ〈商店街占拠〉は商店街の人たちにかけあうというより、県外の人たち、遠い所だと山形からアーティストが来てくれたり、逆にこの街ではないところで面白いことをしている人たちに連絡をとりました。富士山が見える立地に商店街があって、3日間こうゆうイベントをやりたいんですけど、出演や出店してくれませんかって。
そしてそのイベントにお客さんとして地元の人、商店街の人、地域の人を呼ぶ。そして、みてもらうんです。そこで改めて気づいてもらうというか。このまちに眠っている、あなたたちが持てあましている空間で、おもしろいことができるんですよって。だから商店街、もうちょっと頑張ったほうがいいんじゃない?って。そう伝えるため、動きだすための第一歩としてそのように1回目は開催をしました。そして実際にこのイベントをきっかけに”ENPITU.CO”の活動がおもしろいからこのビル使っていいよ。と言って、眠り続けていたビルの運営をまかせてくれたオーナーがいて、今そのビルをENPITU.COを中心に再稼働させる計画が進行しています。

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―〈FreeShelter〉での地元地域への愛着と、富士山があって、その麓に地元がある。根底には似たおもいれがあるんですね。

 感覚的には似ているかもしれませんね。でも”ENPITU.CO”や〈商店街占拠〉のテーマとしては、地元だけじゃなくて全国でそうゆう商店街は沢山あるので、どこでもできるんじゃないかなと思っています。僕たちの地域だけではなく、地方ではスプロール化はどんどん進んでいくし、それによってもったいないと感じる、そうゆう街やエリアが広がっていますよ。
商店街の空や家率の増加(※3)は進みつづけていて、半分以上人が住んでない商店街も沢山あります。そうゆう現場に行ってみて、その現場を僕らにに使わせてください。つまり占拠させてください!って。それをおもしろい取り組みだなと感じてくれた人がいれば、じゃあこの地でお店はじめてみようかな。とかそうゆうきっかけにつながるんじゃないかなと。そのために、まずは地元からやってみないと。おもしろくなってきているとはおもうんですけどね…笑

―面白いと思いますよ。そうおもっても行動にうつすのは簡単ではないでしょうし、移せる志が凄いとおもいます!

 ありがとうございます。笑

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―最後に、田村いっぺい、個人としての今後の活動の展望はありますか?

 今はイベンターのような感覚で、商店街の人、市民活動をしている人、イベントを開催してみたいという人向けの講座や講師を「人と人をつくる」というタイトルでやらせていただいたりしています。そのすべてが、人と人とが出会って、つながったからこそできたとものだとおもっています。それが僕はおもしろいんです。なので、これからも出会った人同士をつなげていくことがしたい。音楽イベントもそうだし、違うイベントも。イベントごとって、僕は勝手に「直接コミュニケーション型メディア」だって言ってるんですけど、その場で、人と人が出会って、直接コミュニケーションをとってつながっていけば、発信することができるわけじゃないですか。生まれるものもあるし。間接型のマスメディアとは逆の存在ですよね。そうゆう場や機会を提供できるようになっていけたらいいなとおもいます。情報が多い中で、ちょっと逆方向にいく感覚ですかね。リアルなコミュニケーションの価値が高いものを生み出せる人になりたい。
そういう意味も含め、またお店もはじめたいです。味やサービスはもちろんなのですが、やっぱりその場所に来てくれた人がつながってくいことで面白くなっていくお店。今後もそうゆうことを地道に繰りかえしていきたいとおもっています。

 text:MAKO

(※1)ハートランド朝霧
〈FreeShelter〉の会場。静岡県富士宮市、朝霧高原にあり、会場からは富士山が展望できる。普段は牧場体験や酪農実習などの体験学習などをおこない、キャンプ・貸しロッジ・ライブ・バーベキューなどもできる。

(※2)スプロール現象
スプロール化、というのは、そのような街、都市に人が流入し、密度の高いところには、居住する場所がないなどの理由で、外縁部に多数住むようになり、結果的に街・都市の輪郭が拡大していく現象です。これは、主にモータリゼーション、車の普及に拠るところが多いと言われている。

(※3)空や家率の増加
国土交通省資料〈地方都市に関するこれまでのご議論 関係資料〉
http://www.thr.mlit.go.jp/compact-city/contents/suishinkenkyuukai/7/jyouhouteikyou/j_siryou04.pdf

〈Ippei Tamura PROFILE〉
子どもが大好きで、短大にて保育士資格・幼稚園/小学校教諭の免許を取得。保育士として働きながらも大学に編入し心理学を専攻。傍ら、趣味の音楽や旅・アウトドアにも深くのめり込むうちに、あらゆる場面において「人間的な育ち」の要素がある事を知る。卒業後は保育士を辞め各地で様々なサービス業の現場を経験。24歳で地元に戻りbar NEVER LANDを友人と共同で立ち上げると同時にイベント企画なども始める。3年程の経営経験の後、自身は脱退。より文化的で愛のある活動を求め、音楽イベントFree Shelterの本格的立ちあげに協力。現在同イベントの共同代表を務める。自他ともに認める多趣味な人間。音楽はもちろんだが、バックパッカー。静岡県登録富士山世界遺産ガイド。他、天体・カメラ・Web関係など。広く生きて来たからこその独自ネットワークと知恵を駆使して日々旅を続ける。ずっと変わらないのは毎日かぶる帽子と、PIZZAとBEERが好きなこと。

FreeShelter:http://freeshelter.net/

ENPITU.CO:http://enpitu.co/

〈商店街占拠〉 2014 コンセプトムービー

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